自転車屋さんができるまで（仮）

７．心の準備ができてません

－人生はいつも突然に－

さて、残念ながら不採用。との通知を頂いて数日。

そろそろどうしようか次の一手を考えなければなぁ。
等と考えていたら、日中に数件の不在着信が入っていました。

はて？誰だろう？と掛け直すと、懐かしい声。
昔随分とお世話になった方。
僕が某自転車店を退職後に、
『お前個人に付いてくれているお客さんに不自由させるなよ』
と、色々と便宜を図っていただいた某店の社長さんでした。

お互いの近況をやりとりした後、
『君の力になりたいし、なれると思う』とのお話。

なんというか、心配して下さっているのを感じて物凄く嬉しくなりました。

『仲の良い同業者さんや問屋さんに紹介していただけるのかな？』
と思いましたが、前述の通りに『どこでも良い』とは思えなかったので、
『社長と一緒に働いて、教えて頂きたい事がたくさんある』事や、
『本当に自転車とお客さんを愛している経営者さんの下で働きたい』事、
そのため、
『どこでも良い』という気分にはなれない事を正直に話しました。

自分でもバカ正直だなぁとは思いますが、
本音で話せて、本気で頑張れる職場が欲しかったのです。
もう、自転車好きの魂を切り売りするような、そんな商売は嫌だったのです。


自分でも何をどう話したのかは珍しく覚えていないのですが、
おそらく支離滅裂ながらも必死に話した僕の思いを汲んでくださったのでしょう。
ちょっとの沈黙のあと、
『新しい店をやらないか？』
とのお話を、頂いてしまいました。

人間、『言葉を失う』という状況がリアルにあるのだと言う事を、
身をもって知りました。
声が上ずるとかではなく、本当に言葉が出てきません。
『なぜ自分に？』とか『なぜ急に？』とか、
色々と浮かんでは来ますが、直ぐには言葉になりませんでした。

少し日にちを頂いて直接お会いしてお話をする事にして、
その日は電話を終えました。

不安や心配事やプレッシャーはたくさんありましたが、
『そんなお話をいただけるほど評価していただけた』
その事自体が、とても嬉しくて。
とてもありがたくて、しばらくは何をどうすべきかわかりませんでした。

６．いよいよ結果が届いたような

－感謝の気持ちでいっぱいです－

二週間ほどが過ぎ、いよいよ先方から電話が来ました。

物凄くありがたい！と心から感謝しました。
忙しい最中、自分の身勝手で急なお願いに、
真摯に向き合ってくださいました。

思えば最初にお店に足を運んだときの、
『あぁ、なんかあったかい雰囲気のお店だな』という感想は、
こういった店長さん以下スタッフさん全員の思いやりの賜物なのでしょう。

僕の通勤方法や時間、働くにあたってのメリットデメリット。
保険やその他諸々の事も、細かに説明していただきました。














が、結論としてはとある理由で、
不採用の通知を貰ってしまったのです・・・。


さて、どうしたものか・・・。




かくなる上は、量販店にでも行くか・・・。
それも良いかもしれない。
PBとNBのバランスの中で、ノルマの金額をクリアしていく毎日も、
きっとそれなりに充実しているのだろうし。

等とは思えなかったのは、とても申し訳なさそうに断られる代表の、
本当に暖かい対応があったからだと思います。

ダメだったのは残念だけれど、ここに話をして良かった。
そのうち『こないだは無茶言ってすみません』と、
お土産持って遊びに行こう。

などと、この時は悠長（？）に構えていたのです
あの日が来るまでは・・・

５．待ってる間に考える

－リアルに毎日を想像してみる－

もし、OKを貰えたら・・・。
と一日を頭の中でシミュレートしてみます。

子供を保育園に送っていって、その足で電車に乗って・・・。
自転車店ですから通勤にも自転車を使いたいところではありますが、
距離的にも時間的にも、また、子供の送りがセットな事を考えても、
現実的ではありません。

駅からは自転車でも良いですが、
毎日通勤ラッシュの中を輪行するのは、ちょっと勇気が必要です。

閉店後に電車に乗って帰ってきて・・・。
あぁ、誰かに迎えに来てもらわねば・・・。

などと、リアルにシミュレートするだけで、問題点も見えてきます。

働くにあたって、自身の知識の偏りや、抜けも気になります。
気になる部分を埋めるように、毎日資料やWebをあさって、
先方からの連絡を待つとします。

なんだか無理な気もしてきました。
『自分が電車で通勤する』その事自体に、
『ありえんだろ』って自分でツッコミを入れてしまったのです。

歌えないフレーズは演奏できないように、
イメージできない日常は往々にして実現しないのです。

そんな不安な気分も、目の前の日常に忙殺されていってしまいました。

４．それじゃ、どこで働きたい？

－ぜんはいそげ－

九州・福岡には素晴らしい自転車店はたくさんあります。

個性的な所も多いですが、福岡ってそんな県民性だと思うのです。
確かな技術とおしゃれな雰囲気のあのお店。
いかにも老舗、な佇まいのあのお店。
走行会やコース整備に積極的なあのお店。

僕の貧弱な語彙では書ききれないけれど、他にも本当にたくさん。

けれど、不思議と『ぜひともあそこで働きたい』と思えるお店は一つだけだったので、
そちらに電話をかけてみます。

向こうからすればいきなりです。迷惑な話です（笑）
でも一応、平日１４時～１６時の一番暇めな時間にかけてみます。
一般的に、
開店直後→そう忙しくはありませんが、朝イチでヘビーな話を聞いて貰うのも失礼です。
夕方以降→お客さんが増えてきます。一番接客が忙しい時間でしょう。
閉店間際→一日の最後にヘビーな話を～（以下略）
だったりするので、一応気を遣ってみます。

事情を話して・・・。
当然即答はありえないので、検討していただける。という事になりました。

どんな返事をいただけるかは分かりませんが、
なんとかなるんじゃないか？という気持ちになりました。

根拠はありませんが、なぜかそんな風に思えたのです。

３．自転車屋さんで何がしたい？

－やりたい事を見極めよう－

前回のエントリーのような事を考えながら、
『それじゃ一体何がしたい？』と考えました。

自転車販売には様々な形態がありますが、
お店もまちまちです。

モールに入ってるような大型量販店を否定はしませんが、
そこでいくら頑張ったとしても、
ホームセンターの自転車コーナーの売り上げが減るだけのように僕には思えました。
手を汚さない人たちの机上の販売計画に右往左往するのでは、
目の前のお客さんすら見えなくなってしまいます。

商売を『ヒト（お客さん）・モノ（商品）・カネ（売り上げ）』を軸に語るなら、
僕は『ヒト・モノ』を軸にすえた所で働きたい。
『自転車が好きな人（経営者さん）』の元で、『お客さんを大切にする人』の元で働きたい。

お金はとても大切だけれど、それだけを中心に働くのなら
自転車店でなくても良いはずです。

綺麗事かもしれないけれど、スポーツバイク専門店、量販店、
自転車も売る大型玩具店で働いた経験からでた本音です。


別に『最新の機材を潤沢な予算でアッセンブルしたい』とか、
『雑誌やHPでカリスマっぽく（笑）扱われたい』とか、
『[走れる店員]として一目おかれたい』とか、
そんなのはどうでも良いのです。速くないし、とかは置いといて。

自分の気持ちは決まりました。
『自転車を好きな人達と、自転車好きなお客さんを相手に働きたい』

物事はとてもシンプルです。
気持ちが決まると、自然と働きたい場所は決まりました。

あとはお願いするだけ。
断られたら・・・


いやいや、あとは神様に祈るだけです。
デル・ギザッロの女神様は、MTB寄りの自転車好きにも微笑んでくれるのでしょうか？